五番目の季節


1986年5月16日(金)17日(土)新宿・厚生年金会館
全席指定3500円

この「五番目の季節」は自分にとって忘れられないコンサートだった。
私が初めて観た中島さんのコンサートがこれだった。
得てして初めての事ってやっぱり覚えている事も異常に多い。


 5月16日、午後3時過ぎにとりあえずチケットもあても無いまま、とりあえず 会場である新宿厚生年金会館へ向かった。 この、なんのあても無いくせにとりあえず会場まで行ってしまうあたりが、 当時の私のファン度というのが分かるような気もする。

なんのあてもないくせオペラグラスを持って行った私。もしかしたらという気持ちはやはりあった。

会場へ行く道にはダフ屋だらけ。会場へ着いても入り口辺りにダフ屋が居る。 前回の『のぅさんきゅう』で名古屋で初めてダフ屋というものを見たがやはりこの人達はうっとうしい。

当然、当日券なんてものは無く、諦めつつそれでもなんとなく会場をふらふらしてると ダフ屋が話しかけてくる。値段を聞いてみたら3万だと。定価3500円だからほとんど10倍の値を付ける ダフ屋に軽いめまいを感じつつ、その時持っていた明日からの生活費を 全部出しそうになってしまう自分をなんとか押さえ、また会場をふらふらとしてみた。

会場に貼ってあるコンサートのポスターを眺めたり、入場を待つ人の行列を羨望のまなざしで見つめたり、 何もやることがないにもかかわらず、その会場に居る事だけでなんとなく嬉しかったような記憶がある。

見知らぬ人が私に「チケットあります?」と声をかけてきた。見た感じダフ屋では無さそうである。 そういえば「チケット余ってないか?」と何回かダフ屋じゃない人からも声をかけられた。 「いえ、無いです・・」「いや、そうじゃなくてこっち一枚余ってるんですが」というような 会話があり(実際どういう会話したのか覚えてない・・)その方に一枚譲ってもらいました。もちろん定価で。

17日も同じようにやはり何のあてもなく、でも実は前日の事もあり「もしかしたら」と思いつつ会場へ向かった。

ニッポン放送の玄関前で少し話をした人と再び会ったり、握手券を持ってると仲間内(多分)で見せてる人を見かけ 自分も持ってると見せた記憶等あるが(ちなみに握手券はその数ヶ月後入れていた財布ごと紛失。) 二日目の記憶はもうほとんど無い。

開演ぎりぎりになって人が来ないとわめいている人達が居て、私は基本的にそういう事がすんなりできる人間ではないのだが、 観たいという一心で、だったらその一枚私が買いましょうか と話しかけ、17日も観る事に成功。

チケットを持ってる人とそれを譲って貰う人達が居て、譲って貰う人達の一人が来なかったようであった。 いまいち状況がわからないまま、とにかく私はただ観たくて譲って貰い今から考えるとなんだか無理矢理だったかもしない。

<演奏曲目>

・肩に降る雨
<あいさつ> 
こんばんや
・踊り明かそう
・悪女
<MC>
・極楽通りにいらっしゃい
・あしたバーボンハウスで
・忘れてはいけない
・僕たちの将来
・ショウ・タイム
・あたいの夏休み
<中島さん着替え>
・わかれうた
<MC>
・流浪の詩
・ホームにて
<MC>
・少年たちのように
<MC>
・つめたい別れ
・霧に走る
・成人世代
<MC>
・友情
<MC>
・テキーラを飲みほして
・ノスタルジア

<アンコール>

・この空を飛べたら

 初めて観たコンサート。(生の中島さんは実はその時すでにニッポン放送玄関前で見ている) 16日に譲ってもらった席は端のほうのスピーカーのまん前ながら、なんと前から二番目の席。すごい。

会場に『肩に降る雨』が流れ出す。幕は降りたまま。演奏だけが延々と続いたあと 幕が開く。中島さんはうずくまっていてどこやねんと一瞬探してしまった。「い〜くにちあるい〜た♪」と 二番から歌い始める。

曲が終わり、中島さんが挨拶をする低い声で「こんばんや」。会場にざわっと笑い声。中島さんが挨拶をすると どうも笑われる。緊張の緩和というやつのせいか。この挨拶をすると笑われるってのがイヤだったのかは定かではないが、 90年代に入ると挨拶の方法が変わっていった。

アルバムとは全く違うアレンジの『踊り明かそう』。前奏が始まってなんだ?なんの曲なんだ?と思った記憶がある。 考えてみれば、知ってる曲に関してはすべて私は一緒に歌っていた。 もちろん声は出さず、口だけは無意識に動かしていた。恥ずかしいな。

まだこの時発売前だった『あたいの夏休み』曲自体が結構早口で言葉数も多いせいか歌詞がよく聴き取れず、 中島さんの発音の悪さも相まってなんと言ってるのかさっぱり解らなかった。 さすがに「さーまばーけーしょん」は解ったが。

三田寛子嬢に提供した曲『少年たちのように』会場でペンライトが出る。振り返って見てみると 提灯なんぞを掲げてる輩も居た気がする。曲の途中で中島さんまでペンライトを出して振りはじめる。 すげえな。

『ノスタルジア』で前の席の奴が立ちあがる。見えねーじゃねーかと仕方なく私も立ちあがる。 みんななんだかのりのりである。なんだかこういうノリにはついてゆけないな・・と思った。

そしてアンコールの『この空を飛べたら』中島さん、12弦ギターを一人きりで座って弾き語り。これは良かった。 これはかなり印象に残った。中島さんギター下手らしいのだが私には判らない。

『ノスタルジア』で立ち上がったものの『この空を飛べたら』が始まると皆そそくさと座りはじめる。 がさがさと座り始める人たちの前で中島さん一人が弾き語り。なんだか滑稽だった。

曲が終わり、ギターを抱きかかえるようなポーズを取る中島さん。そして幕はおりる。 『幕』ってやっぱりあった方がいいな、と最近思った。


もどる

最初にもどる